【Another Chapter 2】

 

 

3月18日朝7時、まだ早朝であるが故か、それほど車の多くない八戸大橋の上を、

4名を乗せたワンボックスが工業地帯方面へと走っている。

 

車内前列には運転手としてパーシアスエンタープライズ警備部監察班職員である篠塚、

助手席には同じく監察班職員の真渡が乗車、誰かに電話をしている。

 

後部座席の片側スライドドア側に監察班職員荒居が乗車し、

その隣にはこわばった表情の霧洲美晴がケースを抱えて静かに座っている。

 

橋を下り終えた辺りで真渡は通話を終了した。

 

「班長に報告した。佐益の尋問用に地下に一部屋押さえてあるから、そこに連れていけとさ。」

「了解。それじゃこのまま本社でいいな。」

 

運転中の篠塚が答える。

 

荒居は先輩職員2名のやり取りを聞きながら時折隣に座った少女の様子を見ている。

そして、少女に話しかけた。

 

「お前、佐益とはどういう関係だ?」

「……何も。」

「嘘つくんじゃねぇよ。無関係のガキがそんな物騒なもん持ち歩いてるわけねぇだろ。」

「……やっぱり物騒なものなんですか?」

「そりゃぁそうだ。試作型とは言え無人兵器のコントローラーだぞ?」

「おい、荒居。そこまでにしとけ。」

 

真渡が荒居を静止する。

 

車が走る道は先ほど走行していた橋の下をくぐり抜けて埋め立て地へと続いている。

篠塚はハンドルを切りながらフォローを入れる。

 

「尋問するときゃ記録とか残さねぇと後で班長からどやされるんだ。本社につくまではその嬢ちゃんには黙っててもらえ。」

「…うっす。…いいか、しばらく黙ってろ。」

「…質問してきたのそっちじゃない…。」

「うるせぇ、静かにしてろ。」

 

車内は一瞬沈黙した。しかし、車が橋の真下に差し掛かった瞬間、

 

 

― ガシャンッ ―

 

車内に金属がぶつかったような大きな音が響いた。

荒居は少女が何かしたものと思って少女に怒鳴る。

 

「静かにしてろと言っただろ!」

「私じゃありません‼」

 

「…おい、天井へこんでないか?」

 

真渡が異変に気付いた。

 

「…ホントだ…。何か天井に落ちてきたんすかね。」

 

荒居も異変を確認する。

不穏な空気の車内には、さらに2,3度、軽い金属音が響いた。

 

 

「…篠塚。一旦路駐してくれ。」

「分かった。」

 

篠塚は車のハザードランプを焚き、路上駐車をするためにハンドルを切ろうとした。

しかし、車が停止する前に車内後方から金属のねじ切れるような激しい異音が響いた。

車内にいる全員が異音の原因を探して車の後方を振り向いた。

 

 

 

全員の目には、青い光と白いシルエットが映り込んでいた。

 

 

 

>【Chapter 9】